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証券新聞5/25号「国外転出時課税の贈与、相続の取扱い」

2017-05-25 (Thu) 14:49
Q1.上場株式を5億円程度保有している者ですが、娘が海外に居住しています。非居住者に上場有価証券を承継させる時は国外転出時課税の対象になると聞きました。私が亡くなり非居住者に有価証券すべてを「相続」させた場合、亡くなる前にすべてを非居住者に「贈与」した場合、それぞれ国外転出時課税の所得税に加えて相続税や贈与税が課税されるのでしょうか。

20170525
 

A1.
(1)国外転出時課税とは
平成27年度の税制改正で、国外転出時課税が導入されました。海外移住後に有価証券を売却することにより、日本の所得税の課税逃れがおこることを防ぐためです。
この制度は,次の(1)から(3)までに掲げる時において,一定の居住者が1億円以上の有価証券や未決済の信用取引などの対象資産を所有等している場合に,対象資産の譲渡等があったものとみなし,対象資産の含み益に対して所得税を課税する制度です。
(1) 対象者が国外転出をする時(所得税法60条の2)
(2) 対象者が亡くなり,相続又は遺贈により国外に居住する相続人又は受遺者が対象資産の一部又は全部を取得する時(同法60条の3)
(3) 対象者が国外に居住する親族等(非居住者)へ対象資産の一部又は全部を贈与する時(同法60条の3)
ご質問の相続のケースは上記(2)に、贈与のケースは(3)に該当します。この場合対象資産の含み益に対して譲渡所得が認識され、所得税が課税されることとなります。そして、この場合の相続税、贈与税は以下のように取り扱われることとなります。
(2)国外転出(相続)時課税
ご質問者様がなくられた場合、死亡時までに発生した所得について準確定申告を行い、所得税を納税することとなります。この準確定申告で国外転出時課税の対象となる資産の含み益も含めて所得を申告することとなりますが、この準確定申告で支払った所得税は、相続税の計算において債務控除の対象となります。そのため、二重課税の負担は軽減されることとなります。
なお、国外転出時課税に納税猶予制度を適用した場合には、債務控除の対象とはならないため、留意が必要です(相法14(3))。
(3)国外転出(贈与)時課税
贈与税については、相続税のように債務控除というものがありません。よって確定的なことはいえないものの、ご質問のようなケースが発生した場合、資産移転(贈与)について贈与側では国外転出時課税による譲渡所得を認識し、受贈側では贈与税を認識することとなります。
(4)贈与等の時に課税された資産の取得価額
原則として相続や贈与によって取得した資産は、死亡した人又は贈与した人の取得費を引継ぎます。しかし、国外転出時課税の対象となった資産については、贈与等があった時の有価証券の時価に相当する価格に取得価額を付け替えます。よって国外転出時課税によって実現した含み益については、取得価額のステップアップによって、将来譲渡所得の圧縮につながります。しかし、非居住者が日本で株式の譲渡所得について課税されるケースは限定的であることから、影響を受ける方は多くはないかもしれません。

Q2.国外転出時課税に対する住民税の取扱いについて教えてください。非居住者への贈与のケースでも同様の考えでよいのでしょうか。

A2.現行法上、個人住民税は1月1日に日本国内に住所を有する者の前年の所得に対して課税することとされています。そのため、年の途中で海外に移住したり相続が発生し転出時課税の対象となった者については、住民税は課せられないこととなります。
国外転出時課税における贈与税のケースでは、翌年1月1日時点においても贈与者が国内に引き続き住所を有していることが考えられるのですが、平成27年度の税制改正において、地方税法第32条の所得割の課税標準の規定が改正され、平成28年度分以降の個人住民税については、国外転出時課税の譲渡所得は除いて計算することとされているため、国外転出時課税における贈与税のケースであっても個人住民税はかからないこととなります。
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