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証券新聞11/4号

2016-11-04 (Fri) 09:41
「(税制改正要望)上場株式の相続税評価額」
Q.私の父は資産運用のために上場株式を10銘柄ほど所有しています。中には優良銘柄もあり、手放すのはもったいないと父が言っているので、いずれ父に相続が発生した場合には、父の意を汲んで遺族となる私たちがこの上場株式を相続しようと思っています。そのような中、先日知人から、今後は相続税の計算をするうえで上場株式の評価の方法が変わるかもしれないと聞きました。いったいどのように変わるのでしょうか。

20161104

 
A.毎年夏頃に各省庁等から来年度の税制改正の要望が出されますが、本年金融庁から出された来年平成29年度の税制改正の要望の一つに、ご質問の上場株式の相続税評価の方法の変更が挙げられています。この要望が採用されれば、将来において上場株式の相続税評価の方法が変わることになります。例年12月中旬に公表される、平成29年度税制改正大綱で改正の方向性が示されます。

(一)現行の評価方法
現行の相続税の計算における上場株式の原則的な評価方法は、相続が発生した日の終値と、相続が発生した月、その前月及び前々月の各月の終値の平均値を比較して、最も低い価額によって評価します。つまり、相続税の計算において上場株式の評価は相続発生時の価格を基準として行われます。

(二)金融庁平成29年度税制改正要望
金融庁の税制改正の要望では、上場株式の相続税評価について次の三つを挙げています。

(1)相続税評価額に相続時から納付期限までの価格変動リスクを考慮
上場株式は換金性が高いため、相続税の納税資金を捻出するために、相続人が相続税の納付期限(相続発生日から10ヶ月)までに売却することも想定されるところ、実態として遺産分割協議が整うまでは売却できないために、相続発生から上場株式売却まで10ヶ月程度の期間が経過することが想定されます。。上場株式は価格変動リスクが高い金融商品ですから、売却時の株価が相続発生時の株価を下回る可能性があるにもかかわらず、現行制度の相続税評価額にはそのリスクが考慮されていません。そこで、過去のデータから平時の価格変動リスク相当額(割引率)を試算して、10%程度を相続発生時の価格から割り引くことを要望しています。
上場株式と同様に流動性の高い預金や債券は価格変動リスクが小さいため、将来的に納税資金に充てる目的で金融商品を保有する場合に、現行制度では上場株式が敬遠されるとの指摘に対応するものです。また、一般的に取得価額よりも相続税評価額が下がるとされている不動産が相続対策として人気が高いのに対して、上場株式にはそのようなニーズがないことも影響しているようです。

(2)相続後著しく価格が下落した上場株式について特例を設置
過去にはリーマンショックや東日本大震災などで株価が大きく下落しました。このような事態が生じた場合の価格変動リスク相当額(割引率)は前述の平時の割引率10%程度を大きく上回っています(リーマンショック時約22%、東日本大震災時約17%、金融庁資料より)。金融庁の要望では相続発生後に通常想定される価格変動リスクの範囲を超えて価格が著しく下落した上場株式については評価の特例を設けることを挙げています。

(3)上場株式の物納順位を第一順位の資産と同等とすること
相続税は一定の事由を満たす場合には納税者の申請により相続財産による物納が認められています。物納できる相続財産には優先順位があり、後順位の財産は先順位の財産に適当な価額のものがない場合などに限り物納が認められます。第一順位は国債、地方債、不動産及び船舶で、上場株式は社債や非上場株式及び証券投資信託又は貸付信託の受益証券と同じ第二順位です。金融庁は第二順位の上場株式を第一順位の資産と同等となるような見直しを要望しています。これにより例えば、上場株式を所有していたことで先祖代々所有する不動産を手放すことが回避できるような状況が生まれるかもしれません。上場株式の換金性の高さを考えれば売却して現金で納税することも容易なように思われますが、物納による譲渡所得は非課税(租税特別措置法第40条の3)とされていますし、物納の価額は原則として相続税評価額を用いますので、多額の含み益がある場合や株価の下落局面など、状況によっては物納を選択した方が有利になることも考えられます。