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証券新聞12/3号

2015-12-03 (Thu) 13:55
証券新聞12/3号「M&A等の際の非上場株式価値の考え方」
Q.利害関係のない第三者から非上場株式を取得しようと考えておりますが、いくらで取得すべきかわからず困っております。
一般的にはどのような方法で取引価格を決定すればよいか、教えていただけますでしょうか。

20151210
A.
1.M&A等の際の非上場株式の考え方
非上場株式の評価は、株式を取得する側と売却する側の関係により異なります。一般的に親族への事業承継等の場合、財産評価基本通達による取引相場のない株式の評価等の税法を基準にして行いますが、今回のような利害関係のない第三者間の売買やM&A等においては、税法基準ではなく、インカム・アプローチの一手法であるDCF法、コスト・アプローチの一手法である時価純資産法が、一般的には基準として用いられます。
 
2.株式価値(取引価格)の評価方法について
取引価格の前提となる株式価値は、企業価値から有利子負債を控除して算定されるため、株式価値の評価にあたっては企業価値の評価方法の選択が重要となります。
企業価値を評価する方法には多様なものがありますが、日本公認会計士協会編「企業価値評価ガイドライン」(改訂版)(以下、「企業価値評価ガイドライン」という)では大きくインカム・アプローチ、マーケット・アプローチ、コスト・アプローチの3つに分類を行っています。

(1)インカム・アプローチ
インカム・アプローチとは、評価対象会社から期待される利益、ないしキャッシュ・フローに基づいて価値を評価する方法であり、代表的な評価方法には「DCF法」や「収益還元法」があります。
インカム・アプローチは、将来収益獲得能力を直接的に価値に反映させることができる評価方法と考えられる一方で、将来収益の予測に不確実な要素が含まれるため、客観性に問題があります。

(2)マーケット・アプローチ
マーケット・アプローチとは、上場している同業他社や類似取引事例など、類似する会社、事業、ないし取引事例と比較することによって相対的に価値を評価する方法であり、代表的な評価方法には「市場株価法」や「類似上場会社法」があります。
マーケット・アプローチは、不特定多数の市場参加により形成される株価をベースとするため、比較的客観性が高く、かつ間接的に企業の将来収益獲得能力を反映できる一方で、株価が特殊外部要因による異常な動きをみせている場合や、類似会社の選定において、事業内容や規模、成長性など多くの要素において類似する企業を選定することが困難な場合があり、またコントロール・プレミアムや事案の固有の性質を反映できない等、精度に問題が生じるケースがあります。 

(3)コスト・アプローチ
コスト・アプローチとは、会社の貸借対照表上の純資産に注目したアプローチであり、代表的な評価方法には「簿価純資産法」や「時価純資産法」があります。
コストアプローチは、貸借対照表を基に評価するアプローチであるため、客観性・確実性に優れている一方で、資産及び負債を個別に評価しているため、それらが関連付けられて生み出された付加価値であるのれんを無形資産として企業価値に反映できない可能性があります。
 
このように、各評価方法には長所及び短所があるため、評価アプローチの採用につき特定の場面では特定の評価アプローチを必ず採用すべきとは言い難く、対象となっている企業価値を取り巻く環境、それぞれの評価アプローチの特徴、業種的な特性、その他要素に鑑みながら適切と思われるアプローチを選択する必要があると考えられます。
 
3.非流動性ディスカウントについて
非上場株式の企業評価においては、対象株式の流動性の程度に応じた「非流動性ディスカウント」を企業価値に反映させる事例が多くあります。当該ディスカウントは、評価が必要になっている場面や企業内容に基づいて慎重に適用されるべきものであり、機械的に適用することは、誤った評価額を算定する結果になる可能性があります。
最近では、非上場会社のM&Aに反対した株主からの株式買取請求の公正な価格の算定時、市場で株を売買できないことを理由に株価を低く見積もることが認められるかが争われた訴訟で、平成27年3月26日の最高裁第1小法廷(池上政幸裁判長)の判決において、「非流動性ディスカウント」の減価が認められないケースが示されており、今後「非流動性ディスカウント」を考慮する際は一層の留意が必要と考えられます。