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証券新聞5/15号『医療法人の出資金の評価と納税猶予制度』

2014-05-15 (Thu) 17:51
Q.私は10年ほど前から医療法人を運営しており、その出資持分の大半を妻と2人で保有しています。私には後継者となる息子が1人いるのですが、仮に相続や贈与によって当該、出資持分が息子に引き継がれる場合、その評価についてはどのように行われるのでしょうか。

20140516


 
A.
(1)医療法人の3分類
医療法人は、医療法第39条の規定により設立される法人であり、(1)財団たる医療法人、(2)社団たる医療法人(持分の定めあり)、(3)社団たる医療法人(持分の定めなし)の3つに分類されます。
(1)及び(3)の類型については、そもそも出資持分の概念がない若しくは出資に対する持分
権を出資者は有しませんので、ご質問のような相続や贈与時の評価の問題ということは生じません。従って、ご質問の出資金は(2)の類型であることを前提と致します。
 
(2)医療法人出資持分の評価
医療法人の出資持分の評価は、取引相場のない株式の評価方式に準じて評価します。すなわち、法人の規模により類似業種比準方式、類似業種比準方式と純資産価額方式の併用方式及び純資産価額方式により評価することとされています。
ただし、医療法人特有の論点として、主に以下の点が挙げられます。
・医療法人は各社員の議決権が出資持分に関わらず平等であることから、純資産価額の
算定に際して、仮に持分取得者及びその同族関係者の有する持分の合計が評価対象と
なる医療法人の持分の50%以下であったとしても、20%評価減の適用はありません
(財産評価通達185のただし書参照)
 ・医療法人は剰余金の配当が禁止(医療法54条)されているため、配当還元方式の適用
がなく、また、類似業種比準価額による場合も配当金額を除外した算式により計算を
行います。
 ・類似業種比準価額算定の際の業種目は、「その他の産業」とされています。「その他の
産業」は大分類のみであるため、財産評価通達181条ただし書きの適用はありません。
 
(3)医療法人の相続問題と医療法改正の経緯
 医療法人は剰余金の配当が禁止されていることもあり、長年の経営によって積み上げられた剰余金が多額となる傾向にあります。従って持分あり医療法人の持分の相続又は遺贈が発生した場合、相続人は多額の相続税を負う可能性が高く、従前、そのような場合に出資持分払い戻し請求権を行使し、それによって医療法人の資金が相続人に多額に払い戻され、医療法人の医業継続が困難になるような事例が生じていました。
 そこで平成19年に施行された医療法改正において、医療法人の非営利性を徹底し、医業を安定的に継続させる観点から、持分あり医療法人の新設が出来なくなりました。そして、従来からの、持分あり医療法人については、経過措置型の医療法人として、持分なし医療法人への移行が推奨されてきましたが、出資者が持分を放棄した場合に他の出資者の持分が増加することで発生する贈与税の問題や、一方で贈与税の課税なく移行できる制度も存在するものの、その要件クリアのハードルが高いこと、その他様々な要因により、持分なし医療法人への移行は、今現在も十分に進んでいない状況です。
 
(4)医療法人に関する相続税及び贈与税の納税猶予制度の創設
 そこで、平成26年税制改正法案において、医療法人に関する相続税及び贈与税の納税猶予制度が新設されています。
当該納税猶予制度によれば、仮に相続人が持分の定めのある医療法人の持分を相続又は遺贈により取得した場合であっても、その法人が持分なし医療法人への移行計画の認定を受けた医療法人(以下、「認定医療法人」という)である場合は、移行期間の満了まで相続税の納税を猶予し、最終的に持分を放棄した場合には猶予税額が免除されることとなります。また、出資者持分が増加することで発生する贈与税についても、認定医療法人であれば同様に納税の猶予及び最終的に免除が受けられることとなります。
 なお、認定医療法人となるためには、(1)持分の定めのない医療法人への移行計画(3年以内)の策定及び(2)持分の定めのない医療法人への移行検討に関する定款変更を行う必要があります。さらに、移行期間である3年以内に新医療法人への移行が達成できない場合又は認定の取り消しや持分の払戻し等の事由が生じた場合には、猶予税額を利子税とともに納付する必要があります。
 当該、納税猶予制度の利用により、多額の相続税負担によって医業継続が困難となる懸念を解消し、持分なし医療法人への移行が促進されるとともに、地域医療の担い手として、住民に医療を安定的に提供することが可能となります。
 当該改正は、今後制定予定である、移行計画の認定制度施行の日(平成26年10月1日予定)以後のみなし贈与又は相続若しくは遺贈に係る贈与税又は相続税より適用するものとされています。
 
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