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相続により取得した非上場株式を発行会社に譲渡した場合の特例

2013-12-05 (Thu) 18:01
Q.私は卸売業を営むX社(非上場)の経営者です。
先日、当社の創業者であり全株式を保有していた父が他界し、一人息子である私が自社株の全てを相続することになりました。ところが、父の遺産の大半が、自社株であったため、相続税の納税資金を確保することが困難な状況です。そのため、相続した株式を当社に売却して現金化することを検討しています。
父の生前に、相続で取得した非上場株式を発行会社へ譲渡した場合には、税務上の特例が適用できると聞いていたのですが、具体的にはどのような特例があるのでしょうか。
 
20131205


 
A.
(1)株式を発行会社に譲渡した場合の原則的な扱い(みなし配当課税)
個人が非上場株式を第三者(発行会社以外)に譲渡した場合には、株式の譲渡価額と取得価額との差額が譲渡損益となります。
譲渡損益は譲渡所得として分離課税の対象となり、一律20.315%(所得税15%、復興特別所得税0.315%、地方税5%)の税率が適用されます。
しかし、個人が非上場株式を発行会社に譲渡した場合は、第三者に譲渡した場合とは異なる課税上の扱いとなります。株式の譲渡価額がその株式に対応する資本金等の額を超える部分について、みなし配当があったものとされます。また、その株式に対応する資本金等の金額と取得価額との差額が株式譲渡損益となります。
例えば、株式の譲渡価額を100、その株式に対応する資本金等の額を50、取得価額を30とした場合、みなし配当が50(=100-50)と、譲渡損益が20(=50-30)生じることになります。
みなし配当は配当所得として総合課税の対象となり、最高で43.915%(所得税40%、復興特別所得税0.315%、住民税10%、配当控除6.4%)の税率が適用されます。一方で、譲渡損益は譲渡所得として分離課税の対象となるため、譲渡損失が生じた場合でも配当所得とは損益通算されません。従って、みなし配当の額が多額となるケースや、給与所得など他の総合所得が多いケースでは、所得税等の負担が重くなることになります。
 
(2)相続により取得した非上場株式を発行会社に譲渡した場合
相続により取得した非上場株式を、相続開始後3年10ヶ月以内に発行会社に譲渡した場合には、みなし配当課税が適用されないという特例があります。
この特例が適用される場合には、譲渡損益は譲渡所得として分離課税(一律20.315%)の対象となります。相続の場面では、みなし配当課税が適用される場合と比較して所得税の負担額が軽くなるケースが多いといえますので、相続税の納税資金を確保するために有用性の高い制度です。
但し、この特例を適用できるのは、株式を譲渡する方が相続税法の規定により納付すべき相続税額がある場合に限られていますので注意が必要です。相続財産が相続税の非課税額の範囲内の場合や、配偶者の税額軽減の特例の適用により相続税を納めなくてもよい方が株式を譲渡する場合などにはこの特例の適用はありません。
なお、この特例を適用するためには、株式を発行会社に譲渡する時までに、「相続財産に係る非上場株式をその発行会社に譲渡した場合のみなし配当課税の特例に関する届出書」を、発行会社の本店又は主たる事務所の所在地の所轄税務署長に提出することが必要です。
 
(3)相続税の取得費加算の特例
 また、ご質問のケースでは、相続税の取得費加算の特例も適用されるものと考えられます。この特例は、相続により取得した財産を、相続開始後3年10ヶ月以内に譲渡した場合に、納付すべき相続税のうち一定の算式により計算した金額を譲渡資産の取得価額に加算できるという制度です。譲渡所得を小さくすることができることから、税負担額を軽くすることができます。

(参考:取得費加算の特例適用による譲渡所得の計算)
(1)取得費に加算する相続税額=その者の相続税額×その者の相続税の課税価格の計算の基礎とされた譲渡資産の価格/(その者の相続税の課税価格+その者の債務控除額)

(2)譲渡所得=譲渡対価の額-(取得費+譲渡費用+(1)) 

(4)まとめ
 市場で売却することが可能な上場株式と異なり、非上場株式の相続の場面では、納税資金の確保や、評価額の算定方法など、難しい論点が多く発生します。
上記のような税務上の特例についても、適用漏れ等が起きる可能性がありますので、お近くの税理士等へ相談されることをお薦め致します。
 
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