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証券新聞6/20号『自社株の従業員持ち株会への移動』

2013-06-20 (Thu) 17:49
Q.私は、非上場会社の経営者で、そろそろ引退を考えています。現在会社の株は私が100%保有しており、相続により後継者である息子が全て承継することを想定していましたが、相続税額を試算したところ、納税資金に余裕がないことが判明しました。
そこで、長年会社に貢献してくれた従業員への感謝の気持ちを込め、自社株の一部を従業員持株会(民法上の組合形式)へ贈与又は割安な金額で譲渡することを思いついたのですが、この場合の税務上の留意点について教えて下さい。
20130620

 
A.
(1)従業員持株会とは
従業員持株会とは、会社の従業員が、金銭を拠出し会社の株式を取得することを目的として運営する組織をいいます。

(2)従業員持株会への自社株の移動による効果
経営者が所有する自社株の一部を従業員持株会へ移動させることにより、相続財産が減少しますので、相続税額を減少させることができます。
また、従業員が株式を保有することによって、会社への帰属意識や、経営への参加意識が強まるとともに、配当を実施することにより従業員の財産形成にも役立ちます。
自社株の分散のみを目的にする場合は、従業員個人へ自社株を贈与又は譲渡することも考えられますが、その場合には、以下の問題点があります。

(1)個人に議決権が帰属するため、議決権行使がばらばらになる
(2)従業員が退職した際に自社株の買取価額について争いが生じる可能性がある
(3)従業員が退職した際に買い取らなければ、株式の社外流出を招く
 従って、民法上の組合形式による従業員持株会を通じて間接的に保有させることが有用となってきます。

また、従業員持株会の規約には、次の内容を定めておくことが必要となります。

(1)議決権は、持株会の理事が行使すること
(2)従業員が退職した場合には、持分を持株会が買い取ること
 経営者から従業員持株会への自社株の移動方法には、ご質問にある贈与、譲渡のほかに第三者割当増資という 
 方法も考えられますが、ここでは説明を割愛します。

(3)株式の評価額
経営者から従業員持株会に対して、贈与又は譲渡する際の株式の評価額は、従業員持株会の各会員は同族株主以外の株主に該当すると考えられるため、原則として配当還元価額(例外的評価方法)により算定します。配当還元価額は次の算式により算定します。
 
 
                                      その株式の1株あたり
           その株式にかかる年配当金額(注)         の資本金等の額
配当還元価額=――――――――――――――― ×――――――――――――
                 10%                       50%
 
             直前期末以前2年間の       直前期末の
                配当金額合計        資本金等の額
(注)年配当金額=―――――――――――― ×――――――――
                   2                50円
 
配当還元価額よりも、原則的評価方法による評価額(類似業種比準価額または純資産価額)のほうが低い場合には、有利な方法を選択することができます。
また、会員の中に同族株主に該当する者がいる場合には、贈与又は譲渡する株式のうち、その同族株主の持ち分に相当する株式の評価額は、原則的評価方法により算定するため留意する必要があります。
 
(4)贈与の場合の税務上の取扱い
従業員持株会が民法上の組合として設立されているのであれば、経営者から従業員持株会への贈与は、従業員持株会の構成員である従業員に対して贈与を行ったものとして取り扱われます。
贈与した株式の評価額を各人の持ち分に応じて按分し、各会員(各従業員)がそれぞれ贈与税の申告を行うことになります。各人のその年に贈与により取得した財産の課税価額が、暦年贈与の基礎控除額110万円以下であれば、贈与税の課税はなく、申告も必要ありません。
                                              
(5)譲渡の場合の税務上の取扱い
譲渡価額が取得費を上回る場合、譲渡価額と取得費の差額について譲渡人(経営者)に、20.315%の税金(所得税15%、復興特別所得税0.315%、地方税5%)が課されます。
ただし、配当還元価額での譲渡であれば、一般的に譲渡価額は低額となり、譲渡所得が大きな問題となるケースは少ないといえます。
 
(6)まとめ
前述の通り、従業員持株会への自社株の移動に際しては、移動方法や譲渡価額により課税関係や申告の要否に違いが出てきます。個別の事案に応じて専門的な判断が必要となりますので、実行にあたっては、税理士等の専門家へご相談されることをお勧めいたします。