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証券新聞11/8号『相続税納税猶予制度の適用要件・留意事項』

2012-11-08 (Thu) 13:04
Q.私は25年前に会社を設立し、今も社長を務めておりますが、将来的には取締役の長男に代表権を譲ろうと考えております。ただ、最近体調が芳しくなく、相続のことが心配になってきました。以前、私のような親族の後継者がいる中小企業の場合には、相続税の「納税猶予制度」なるものの適用があるとの話を知人より聞きました。これを利用することで、相続税が低く抑えられると聞きましたが、当該制度の具体的な内容及び利用する際の留意点についてご教示いただけますでしょうか。
20121108


A.
1.相続税の納税猶予制度の内容及び手続
非上場株式等に係る相続税の納税猶予制度は、中小企業における事業承継の円滑化を目的として創設された税制優遇措置であり、一定の要件を満たすことで、経営者から後継者に対する自社株式に係る相続税のうち80%の納税が猶予され、その後も一定の要件を満たし続けることで、最終的に猶予されていた納税額の免除を受けることができる制度です。
 当該特例の適用を受けるためには、以下のような流れで手続を経る必要があります。

(1)相続開始前
会社が計画的な事業承継に係る取組みを行っていることについての経済産業大臣の確認を受ける必要があります。
 
(2)相続開始後・申告期限までの間
会社の要件、後継者の要件、先代経営者の要件を満たしていることについての経済産業大臣の認定を受ける必要があります。また、税務署へ申告書を提出する際に、猶予される相続税額及び利子税の額に見合う担保を提供する必要があります。
なお、この認定のための会社・先代経営者・後継者それぞれの要件は以下のとおりです。

(1)会社の要件
・会社及び特別関係者の経営する会社が非上場の中小企業者であること。
・会社及び特別関係者の経営する会社が資産管理会社や風俗営業会社、収入や従業員がゼロの会社でないこと等

なお、特別関係者の範囲には、代表者の「親族」が含まれますが、通常「親族」といえば配偶者・6親等内の血族・3親等内の姻族が含まれますので、その範囲は従来、相当に広いものでした。しかし、平成23年6月の改正により、この「親族」の範囲は代表者と生計を一にする親族に限るものとされており、その範囲が大幅に縮小されています。
 
(2)先代経営者(被相続人)の要件
 ・会社の代表権を有しており、かつ、同族関係者と合わせて議決権50%超を保有し、後継者を除いたこれらの者の中で筆頭株主であったこと 
 
(3)後継者の要件
 ・相続開始から5ヶ月以内に代表権を有すること
 ・相続開始前において、先代経営者の親族であること
 ・相続開始の時に同族関係者と合わせて議決権50%超の筆頭株主であること
 
(3)納税猶予期間中
毎年(5年経過後は3年ごとに)、継続届出書を所管税務署へ提出する必要があります。
また、納税猶予期間中は、以下の納税猶予継続要件を満たし続ける必要があります。
 ・特例の適用を受けた株式の継続保有
 ・後継者の代表権維持(申告期限後5年超で要件免除)
 ・従業員の雇用の8割の維持(申告期限後5年超で要件免除)
 ・会社が資産管理会社に該当しないこと
仮に、猶予期間中に上記要件を満たさなくなった場合は、その時点で猶予されている納税の全部または一部と、利子税を合わせて納付する必要があります。
 
(4)後継者の死亡等
後継者の死亡等があった場合に「免除届出書」又は「免除申請書」を提出することで、猶予されている相続税の全部又は一部が免除されます。
 
2.経済産業省による平成25年税制改正要望
 経済産業省が公表した平成25年度の税制改正要望には、相続税の納税猶予制度の使い勝手をよりよくするために、以下のような適用要件の見直しが盛り込まれています。
  (1)承継対象を親族外の後継者へ拡大する。
  (2)雇用の8割維持条件を、毎年ではなく5年間の平均で判定。未達成の場合は下回っ
た分を納税する。
  (3)5年経過後に納税猶予額を全額免除する。 等
 なお、上記はあくまでも「改正要望」であり、採用されるかどうかは不明ですが、今後、納税猶予継続の要件は緩和され、利便性は高まっていく傾向にあるものと考えられます。
 
3.制度利用にあたっての留意点
 相続税の納税猶予制度は、相続税の80%が免除されるという、非常に魅力ある制度ですが、先代経営者の相続が開始されてからでは利用することはできません。また、納税猶予期間中は雇用の8割維持などの要件に縛られるため、先代経営者と後継者が協力して、今後の方針を十分に検討した上で、制度の利用を検討する必要があります。
 相続税対策は、株式以外の財産も含め総合的に検討する必要があるため、今後、後継者への事業承継をご検討の方は、お早めに専門家へご相談されてみてはいかがでしょうか。

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