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証券新聞7/5号『仕組み債の相続税法上の評価』

2012-07-05 (Thu) 11:21
Q.私は他社株転換債(評価日は未到来)を保有していますが、多額の含み損が生じています。仮にいま私が死亡した場合、この債券は相続税の計算において発行価額で評価されるのでしょうか。それとも、相場価額のようなものに置き換えられるのでしょうか。
20120705


A.原則として、発行価額(ただし、源泉所得税相当額控除後の既経過利息は加算する)により評価します。
ただし、課税時期(お問い合わせのケースでは、今時点)の対象株式の価額(ただし、源泉所得税相当額控除後の既経過利息の額は加算する)により評価することも可能です。
 
他社株転換債(EB債)は一般に、参照株価(転換対象株式の株価)が、あらかじめ定められた価格以上になった場合には現金で、逆に下回った場合には株券で償還される債券をいいます。他社株転換債の評価は、課税時期と評価日の関係および株価の状況によって、以下の(1)~(3)の3通りに場合分けされます。

≪前提条件≫


  • 転換価格は、発行時の株価以下の特定の水準に設定される。
  • 満期日前の一時点を評価日と定められる。
  • 評価日の株価が転換価格以上ならば、額面分の現金で償還される。
  • 評価日の株価が転換価格未満ならば、株式で償還される。
  • クーポンは現金で支払われる。
 
(1)発行価額に相当する金銭による償還が行われることが確定している場合 
利付公社債の評価に準じ、その発行価額に源泉所得税相当額控除後の既経過利息の額を加算して評価します。
(2)対象株式による現物償還が行われることが確定している場合
満期日に対象株式の引渡しを受けることができる権利(有価証券を目的とする債権的な権利)の価額に源泉所得税相当額控除後の既経過利息の額を加算して評価します。
(3)課税時期が評価日前である場合
原則として、発行価額に源泉所得税相当額控除後の既経過利息の額を加算して評価します。ただし、上場株式の評価に準じて、課税時期における対象株式の価額に源泉所得税相当額控除後の既経過利息の額を加算して評価して差し支えありません。
 
(1)と(2)は評価日が既に到来しており、償還方法が確定しているため、特に問題とはならないと思われますが、(3)は課税時期が評価日より前であり、償還されるのが現金なのか株券なのかが未確定であるため、どのように評価するのかが問題となります。
 (3)のように課税時期が評価日前の場合、他社株転換債は法律的には普通社債ですから、原則として利付公社債の評価に準じ、発行価額を基準に評価します。ただし、他社株転換債の投資元本割れリスクを評価上考慮しなければ、実際の価値に比して不当に重い相続税が課せられる恐れがあるため、課税時期が評価日であると仮定し、投資元本割れリスクが顕在化したものとした価額を基準に評価することも認められています。
もっとも、一口に他社株転換債と呼ばれるものでも、その設計の仕方は多種多様ですので、個別の事案については別途検討が必要です。

Q.一般に「仕組み債」と呼ばれる債券は、他社株転換債以外にもさまざまな種類の債券があります。
それらの債券については、相続財産の評価はどのように行うのでしょうか。


A.あらゆる仕組み債についての評価方法が明示されている訳ではないため、一概には結論づけられません。
前述のとおり法律的には社債ですから、原則として利付公社債の評価に準じ、発行価額を出発点として評価すると考えられます。しかしながら、現実問題として、仕組み債に多額の含み損が生じているケースは数多く存在します。このような場合についてまで一貫して発行価額による評価を行うことは、担税力を上回る相続税負担を納税者に強いる結果となり、妥当とはいえません。したがいまして、課税当局の見解を仰ぐ必要はありますが、証券会社から課税時点の予想売却価額等の時価情報が入手できる場合については、当該価額をもって評価することも認められ得ると考えます。
 もし相続財産に仕組み債が含まれている場合、評価方法が相続税額に大きな影響を及ぼすこともあり得ますので、税理士等の専門家の判断を仰ぐことをお勧めします。