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証券新聞5/24号『特定の評価会社の株式』

2012-05-24 (Thu) 16:10
Q.私の父は、家具メーカーであるA社の株式を保有し、親族と共に経営しております。A社は自社で事業を営むと同時に、子会社を3社保有しています。
事業が順調であることは喜ばしいことですが、一方で、父が亡くなった時の相続税が気がかりです。
最近、株式を保有する割合が高い非上場株式会社では相続税が高額になる場合があると聞きました。これはどのようなことでしょうか。また、その場合の対策についても教えてください。
20120524


A.
1.株式保有特定会社について
 お聞きになったのは、株式保有特定会社のことと思われます。会社の資産構成が著しく株式等に偏っている会社は、その保有する株式等の価値に依存する割合が高いと考えられ、一般の評価会社に適用される類似業種比準方式とは異なる方法での評価となる場合があります。
すなわち、各資産を相続税評価額ベースで評価した結果、その合計額に占める株式及び出資の価額の合計額が一定割合以上であれば株式保有特定会社とし、そうではない一般の会社とは区別します。
一定割合とは財産評価基本通達上の大会社の場合は25%、中会社及び小会社の場合は50%です。財産評価基本通達上どの規模の会社に分類されるかは、業種、従業員数、総資産価額、および直前期末以前1年間における取引金額で決定します。
A社が株式保有特定会社に該当する場合には、次の方法により評価することになります。
 
2.株式保有特定会社の場合の評価方法
 株式保有特定会社で同族株主が株式を取得する場合、開業後3年未満や休業中などの特殊な要因がない限りは、(1)純資産価額方式での評価、(2)いわゆる「S1+S2」方式での評価の2通りの評価方法のどちらかで評価します。
 純資産価額方式とは、会社が保有する各資産、負債を財産評価基本通達に基づき課税時期における評価額により評価する方法です。
 「S1+S2」方式とは、株式保有特定会社の資産のうち株式等以外の資産をS1、株式等の資産をS2に分けて評価する方法です。
S1の部分は、株式保有特定会社が有する株式等と当該株式等に係る受取配当収入がなかったとした場合の株式の原則的評価方法による評価額により算定します。すなわち、当該会社が有する資産のうち株式等以外の部分については、株式保有特定会社ではない普通の非上場会社の場合と同様の評価がなされることになります。
S2の部分は、先ほどの純資産価額方式による算定となります。
通常の大会社の評価方法である類似業種比準方式より、株式保有特定会社の上記2つの評価方法の方が評価額が高くなる場合があります。
そのため、株式保有特定会社に該当するとその株式の評価額が高くなり、相続税が高額になる可能性があるものと考えられます。
 
3.株式保有特定会社にならないためには
 株式保有特定会社に該当しないためには、一般的には株式等の保有比率を引き下げる方策が考えられます。つまり、株式等以外の資産を保有して総資産を増やすことや株式等をそれ以外の資産に組み替えることが考えられます。また、本ケースのような子会社株式の場合には、例えば具体的には下記のような対策案が考えられます。

  • 子会社との合併や子会社からの事業譲受
  • 子会社から配当を受ける

なお、評価会社が株式保有特定会社に該当する会社であるか否かを判定する場合において、課税時期前において合理的な理由なく評価会社の資産構成に変動があり、その変動が株式保有特定会社に該当する会社であると判定されることを免れるためのものと認められる場合には、その変動はなかったものとしてその判定を行うものとされています(財産評価基本通達189なお書)。
 
そのため、長期計画的に対策に取り組むことが必要となります。これを機に、グループ経営の観点から組織を見直すことを検討されてはいかがでしょうか。
 
4.株式保有特定会社をめぐる最近の税務訴訟
本年3月に、株式特定保有会社の判定基準が争点となった税務訴訟の地裁判決が出ました。
株式保有特定会社に関する通達の判定基準は1990年8月の通達改正時に設けられたものですが、裁判においては、現在は規定が設けられた1990年当時とは株式保有の状況が大きく変化したと裁判官は指摘し、株式保有特定会社の判定にあたっては判定の一定割合を画一的に当てはめるのではなく、保有割合や企業の規模、実態などを総合考慮するとして、納税者が勝訴しています(現在、国が控訴中)。