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証券新聞『相続時精算課税と暦年課税との選択』

2011-10-20 (Thu) 14:34
Q.現在、株価が低迷しているため、私が所有している上場株式を子供たちに贈与することを考えています。贈与には、通常の暦年課税による贈与と相続時精算課税制度を利用した贈与があると聞いていますが、どちらの方法を採用したほうが望ましいか教えて下さい。
20111020

A.
1.暦年課税による贈与と相続税精算課税制度による贈与の概要
 暦年課税による贈与とは、1年間(1月1日から12月31日までの期間)に贈与を受けた金額の合計額が110万円を超えて税額が生じる場合に贈与税を納付する制度です。
 他方、相続時精算課税制度とは、特定の贈与者からの贈与について当制度を選択することにより、その方からの贈与は通常の贈与税の計算によらず、贈与金額2,500万円まで贈与税はかからず、それを超える部分の20%に相当する贈与税をいったん納め、相続の際にそれまで贈与した財産を加算したところで計算した相続税からすでに納めた贈与税相当額を控除することにより贈与税・相続税を通じた納税を行う制度です。これは、高齢者が保有する資産の若年世代への移転を促進して消費拡大を図り、景気活性化につなげることを主な目的としています。
 以下、暦年課税による贈与と相続税精算課税制度による贈与の比較表を記載しますので参考にしてください。(現在、相続税・贈与税についての改正が検討されていますが、現時点での税法をもとに記載しています。)
  暦年課税による贈与 相続時精算課税による贈与
贈与者 制限なし 贈与をした年の1月1日時点で65歳以上の親(住宅取得等資金の贈与の場合は制限なし)
受贈者 制限なし 贈与された年の1月1日時点で20歳以上の子である推定相続人(代襲相続人、養子含む)
贈与時 選択 不要 受贈者である子それぞれが贈与者である父、母ごとに選択可
一度選択すると相続時まで継続適用
課税価額 贈与時の時価 同左
税額計算 (贈与財産の価額-基礎控除)×累進税率 (贈与財産の価額-特別控除)×20%
控除 年間110万円 2,500万円の控除枠を限度として複数年の利用が可能
税率 10~50%の累進税率 一律20%
贈与税申告の要否 控除枠内の贈与であれば申告は不要 特別控除枠内でも、申告が必要
相続時 税額計算 なし
(ただし、相続開始前3年以内に贈与した財産については相続財産に合算して相続税の計算を行い、支払った贈与税は相続税から控除される)
贈与財産を贈与時の時価で合算して相続税の計算を行い、支払った贈与税は相続税と精算される(相続税額を超えて納付した贈与税は還付される)
 

2.いずれが有利か
 暦年課税による贈与によるか相続時精算課税制度を利用した贈与によるかのいずれが有利かについては、各人の財産状況や親族関係等によるため、唯一絶対の正解はありません。一般的には、次のポイントを踏まえて検討します。
(1)値上がりするかどうか
 相続時精算課税制度を利用して贈与された財産は、相続税の計算において相続財産に加算されますが、その金額は贈与時の評価額に基づきます。例えば、相続時精算課税贈与をした財産の贈与時の時価が1億円であったものが、相続発生時には2億円になっていたという場合であっても、相続税の計算は1億円をもとにして行われます。したがって、値上がりが期待できる財産であれば、非常に有効と言えます。逆に値下がりが見込まれる場合は、デメリットとなります。
(2)収益性が高いかどうか
 相続時精算課税贈与をした財産は相続税の計算で加算されることとなりますが、贈与後に当該財産から生まれた収益は、受贈者の財産となるため加算されることはありません。そのため、収益性の高い財産を早めに次世代へ移転させることにより、相続税軽減や納税資金準備に利用できます。
(3)次世代の財産需要があるかどうか
 財産を早期に次世代へ移転させたい場合には、2,500万円の枠を有効に使うことによりまとまった金額の財産をいったん無税で次世代に渡すことができます。
(4)将来相続税が生じるかどうか
 将来相続税が生じないと見込まれる方は、相続時精算課税を選択した方が有利と思われます。相続時精算課税であれば、2,500万円までは贈与税がかからず、超える部分についてもいったん納めた贈与税が還付されるからです。
相続税が生じる見込みである方は、相続税の最低税率が現状10%であることから、暦年贈与による実効税率が10%程度までの贈与であれば暦年贈与の方が有利と考えられます。


3.まとめ
相続時精算課税は次世代に早期の財産需要がある場合には有効ですが、株式の場合は特に将来の値上がり、収益性は未知数であり、相続税対策として効果があるのは限られた場合と言えそうです。また、現時点においては相続税が生じない見込みであっても税制改正により状況が変わる可能性は十分にあります。ご自身またはご家族の現状と課題をよく分析したうえで、適切な対応策を検討する必要があります。