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証券新聞9/8号『相続人が保証債務を履行した場合の取扱い』

2011-09-08 (Thu) 10:32
Q.私の父が先日亡くなり、父の財産を相続することになりました。
父は、生前、旧知の友人Aが事業資金の借入を行う際に、債務の保証をしていました。父が亡くなる前に、このAが当該借入の返済が出来なくなり、返済の目途を立てることもできなくなったため、保証人である父に弁済の請求がなされました。
そのような弁済の請求を受けた状況下で、父は亡くなってしまいました。父が債務保証を行っていた事実は私も認識しており、父の相続財産のうち株式の一部を譲渡し、それにより得た資金で当該借入の弁済を考えています。
また、この肩代わりした金額を主たる債務者であるAから返還してもらえる見込みはありません。相続税を計算するとき、被相続人である父自身の借入などは遺産総額から控除できるかと思いますが、当該保証債務も同様に控除することができるのでしょうか。
なお、父の遺産総額は約5億円で、当該保証債務の金額は約1億円です(この他に債務はありません。)。
20110908

A.
(1)相続税における取扱い
遺産総額から控除できる債務は、被相続人が死亡したときにあった債務で確実と認められるものです。原則として保証債務は、債務控除の対象とはなりません。保証債務は、保証債務を履行した場合は主たる債務者への求償権の行使により補てんされるという性質があるため、確実な債務とはいえないからです。
ただし、次のいずれの要件も満たすような場合には確実な債務に近い状態として、主たる債務者が弁済不能となっている部分の金額につき、債務控除をすることができます。

[1]相続開始時において、主たる債務者が弁済不能の状態にあるため、保証人がその債務を履行しなければならない状況であること。
[2]主たる債務者に求償権を行使しても弁済を受けられる見込みがないこと。被相続人が生前に債務保証を履行していれば、相続税計算上、債務控除を改めてすることはありませんが、本ケースでは被相続人たる父が当該債務保証を
履行していない状況であり、前述のいずれの要件も満たすこととなるので債務控除をすることができます。


(2)相続の放棄、限定承認
本ケースでは遺産総額が債務金額を上回っておりますが、逆に遺産総額が債務金額を下回る場合などは、相続の放棄や限定承認という方法等をとることも考えられます。相続を放棄した場合には、その放棄をした者はそもそも相続人でなかったものとみなされるので債務の引継がありません。また、限定承認は取得した相続財産の限度において被相続人の債務を引継ぐことになるので、取得した相続財産を上回る債務金額については弁済義務がありません。
いずれも、相続開始後3カ月以内に、家庭裁判所へ申述書を提出することが必要です。また、一度放棄したら原則として取り消すことができないこととなります。


(3)所得税等における取扱い
債務保証の履行のためであっても、財産を譲渡した場合にはその譲渡所得につき原則として所得税等が課されます。
しかし、保証債務を履行するために資産(一定のものを除く)の譲渡をした場合において、主たる債務者が弁済不能の状態に陥り、当該保証債務履行に伴う求償権を行使できなくなったときは、その行使できなくなった部分については所得の計算上なかったものとする特例があります。本ケースでは、債務保証の履行のために株式を譲渡しており、あなたの当該株式に係る譲渡所得の金額の計算上、その行使できなくなった部分についてはなかったものとします。
なお、(1)により相続税計算上で債務控除をする場合でも、この特例を適用することができます。
また、(2)の限定承認をした場合には被相続人について所得税が課税される場合もあります。相続の放棄や限定承認を行う上では慎重に判断する必要がありますので、検討にあたっては顧問税理士や会計士等の専門家にご相談されることをおすすめします。
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