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証券新聞8/4号『贈与の取り消し』

2011-08-04 (Thu) 13:26
Q.私は60代の年金生活者です。子供達はみな独立し、年金収入のほか現役時代の蓄えで購入した上場株式の配当もあり、妻と二人の生活には十分な収入があります。昨年末に待望の初孫が誕生しましたので、孫の教育資金の足しにでもなればと思い、保有していた上場株式の名義変更を行い今年1月に長男に贈与しました。しかしながら、今回の大震災で私たち夫婦の今後の生活に不安を感じるようになってしまい、株式の名義をもとに戻して贈与を取り消したいと思っています。

贈与を取り消した場合には二重の贈与税がかかってしまうのではないかとも心配しております。贈与の取り消しはできるのでしょうか、ご教示ください。なお、長男は贈与した株式を今も保有しており、贈与の取り消しには賛同してくれています。
20110804

A.民法第549条では、贈与を「当事者の一方が自己の財産を無償で相手方に与える意思を表示し、相手方が受諾をすることによって、その効力を生ずる」ものと定めています。
税務上は、個人が他の個人から財産をもらったときに贈与税がかかるものとされています。
贈与は当事者間の合意により成立する契約ですが、必ずしも書面による必要はなく、口頭でも贈与契約は成立します。
贈与に際し贈与契約書が作成される場合もありますが、贈与の多くが親族間などの特別な関係がある者同士で行われることが多いため、契約書によらず口頭合意によって行われる場合もあります。
贈与の撤回も当事者間の合意により成立します。書面によらない贈与の場合は、すでに贈与の履行の終わった部分を除いて、当事者の一方の意思により撤回が可能です。

ご質問のケースでは、(1)贈与を取り消した場合にご長男への贈与税の課税が行われるかどうか、(2)名義をもとに戻した場合にご質問者自身に贈与税の課税が行われるか、が問題となります。


(1)贈与を取り消した場合のご長男への贈与税の課税

贈与当事者間の合意により贈与契約が取消された場合でも、原則として、当初の贈与契約により贈与を受けた財産は贈与税の課税の対象となります。
ただし、当事者の合意による取り消しが以下のいずれにも該当する場合で、税務署長がその贈与契約に係る財産の価額を贈与税の課税価格に算入することが著しく負担の公平を害する結果となると認める場合に限って、その贈与はなかったものとして取り扱うことができるものとされています。

(1)贈与契約の取り消し又は解除が当該贈与のあった日の属する年分の贈与税の申告書の提出期限までに 
 行われたものであり、かつ、その取り消し又は解除されたことが当該贈与に係る財産の名義を変更したこと 
 等により確認できること。

(2)贈与契約に係る財産が、受贈者によって処分され、若しくは担保物件その他の財産権の目的とされ、又は
 受贈者の租税その他の債務に関して差押えその他の処分の目的とされていないこと。

(3)当該贈与契約に係る財産について贈与者又は受贈者が譲渡所得又は非課税貯蓄等に関する所得税その
  他の租税の申告又は届出をしていないこと。

(4)当該贈与契約に係る財産の受贈者が当該財産の果実を収受していないこと、又は収受している場合には、 
 その果実を贈与者に引き渡していること。

したがって、ご質問のケースでは、来年の確定申告までに名義をもとに戻しておくこと、ご長男が贈与を受けた上場株式について配当を受領していないこと(配当を受領している場合には配当金をご質問者に引き渡していること)、などの要件を満たす場合には、税務上も贈与はなかったものとして認められる可能性があります。


(2)名義をもとに戻した場合のご質問者自身への贈与税の課税

贈与を取り消した場合で、前述の要件が満たせなかった場合にはご長男に贈与税が課税されることとなります。しかしながら、贈与契約の取り消しにより当該贈与に係る財産の名義を贈与者の名義に名義変更した場合の当該名義変更については、税務上で当初の贈与がなかったものとされるかどうかにかかわらず、贈与として取り扱わないこととされています。
したがって、ご質問のケースでは、株式の名義をご質問者の名義に戻した場合でも、ご質問者自身に贈与税は課されません。