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証券新聞10/21 生前退職金の支払いによる株価評価への影響

2010-10-21 (Thu) 09:32

Q.私の父が設立し、今も社長として経営している会社があります。当社の株式(以下、「当該株式」といいます。)は、大半を父が保有しています。当社は非上場会社です。毎期一定の利益を計上していますが、将来的な業績は不透明です。そこで気になるのが、後継者である私が当該株式を引き継ぐ際の相続税のことです。最近新しい税制が創設され、大幅に税金が猶予されることも聞いています。ただし、将来的に納税猶予の適用を受け続けるために厳しい要件を充足し続ける必要があるとのことですが、そうする確信もないので株式の評価額自体を出来るだけ引き下げたいと思っています。幸いにも当社の資金は潤沢にありますので、対策の一つとして父に対して退職金を支払うことを検討しております。父の相続が発生した場合の死亡退職金ではなく、生前に退職金を支払うことによる評価額の引下げ効果と、その際に留意しておくべきことがあれば教えてください。
20101022  


 

 A.1.自社株式の評価への影響項目
   取引相場のない株式の評価は、会社の規模や業種、また、株式を取得する人等の支配力等に応じて
   評価方式が異なります。その中で、通常、評価額を算定する際に評価のベースとなるものは、
   類似業種比準価額方式
(1)と純資産価額方式(※2)です。ご質問にもあるとおり、
   納税猶予制度の創設により大幅な納税の猶予や免除が認められることとなりましたが、
   適用に際しての要件も厳しく、承継後の経営環境に不安がある場合には選択しづらくなります。
   また、そもそも納税猶予の対象となるのが発行済株式総数の
3分の2までに相当する株式
   
(議決権に制限があるものは除く。)だけです。したがって、評価額の引下げ自体も検討しておくのは
   有用です。

   (1) 類似業種比準価額方式:評価対象会社と類似する、上場会社の「株価」を基として、評価会社と
   類似会社の「配当金額」「利益金額」「純資産価額」を比較して求めた比準割合に基づき、評価する方式
    
   (
2) 純資産価額方式:課税時期における各資産と各負債を時価によって測定し、それに基づいて
   評価する方式
   今回、生前に退職金を支払うことで、株式評価に影響してくる部分は、類似業種比準価額方式における
   「利益金額」の引下げと、「純資産価額」の引下げです。
 
   類似業種比準価額方式における「利益金額」は、直前期若しくは直前々期の法人税申告書における
   所得金額を基準として算定されます。一方、「純資産価額」は直前期末の資本金等の額と申告書上の
   利益積立金の額の合計として算定されます。生前退職金を支払うことによる引下げを検討するので
   あれば、贈与若しくは相続の発生の時点では、直前期若しくは直前々期において退職金の支払を
   済ませている必要があります。

  2.生前退職金を支払うことの効果
 1.に記載のとおり、生前に退職金を支払うことで株式評価額に影響してくる部分は、「利益金額」の引下げ  
  及び「純資産価額」の引下げです。
 死亡退職金を支払う場合と、生前退職金を支払う場合で、相続財産評価額(株式に限らない全体)に影響  
  する部分を考えてみます。
 [死亡退職金の支払いの場合] 
 みなし相続財産として、退職金から一定の非課税金額(法定相続人1人当たり500万円)を控除した金額 
  が相続財産となります。また、株式評価額の算定上、未払退職金として計上することで純資産価額方式 
  に係る金額が引下がります。その分だけ株式評価額の減少に寄与します。
 [生前退職金の支払いの場合]
 生前退職金として支払った金額のうち、所得税等税引き後の額から費消した額を差し引いて相続発生時  
  点で残存しているものは相続財産となります。また、退職金を支払った期の翌期若しくは翌々期に贈与な
  いし相続をした場合は、株式評価における、「純資産価額」に加え「利益金額」が引下がり、株式評価額の
  減少に大きく寄与します。
 二つのケースを比べると、一概に判断できないのですが、あえて言うと、生前退職金を支払う場合の方が 
  全体の税負担が小さくなるケースが多いと思われます。ただし、ケースに応じて異なりますので、
  事前に十分な検討が必要であることにご留意ください。

 3.
法人税関連の留意事項
 一方で、法人税を考慮すると、退職金をいくら支払ってもいいわけではありません。法人税においては、
 業務従事期間や功績、また同業他社の役員退職給与の支給状況等を考慮して、退職給与として相当と
 認められる金額を超える部分については損金として認められないこととなります。
 また、実態として退職するか分掌変更等により従来の役職を退く必要もあります。
 退職金受給後も代表権を有する場合や実質的に経営上主要な地位を占めている場合は
 除かれることとなりますので留意が必要です。
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