What's New 更新情報

証券新聞20100805

2010-08-05 (Thu) 09:26

Q.私は製造業の会社を経営していますが、そろそろ息子に会社を譲ろうと考えています。
しかし、自社株式の生前贈与による事業承継についてはいろいろと考慮すべき問題があると聞きました。
問題点とその対応方法について教えてください。
20100805


A.生前のうちに自社株式を贈与し、先代経営者がこれまで育ててきた会社を後継者に譲ることには、
後継者の自立を促したり、将来における株価の上昇による相続税額の上昇を抑えることができるという
メリットがあります。
 しかしながら、生前贈与に関しては贈与税課税の問題と遺留分の問題という大きく2つの問題点が
あります。


(1)贈与税の問題
自社株式を贈与した場合には、その時点での相続税評価額に基づいて後継者に贈与税が課されますが、  
  贈与税率は最高50%であることからこの贈与税が非常に高額になるケースが多くあります。

(2)遺留分の問題
遺留分とは、一定の相続人が相続に際して法律上保証されている、被相続人の遺言等によっても
侵害することのできない権利です。

 後継者に自社株式を生前贈与した場合には、この自社株式も遺留分の対象となりますので、
これが他の相続人の遺留分を侵害することとなる可能性があります。また、遺留分を算定する際の
基礎財産は、相続発生時の時価で評価するため、事業を承継した後の株価の上昇分についても
遺留分の対象となることから、後継者の経営意欲を阻害してしまう可能性があります。
これらの問題に対応して「中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律」(経営承継円滑化法)
が制定され、上記2つの問題点が一部解消されることとなりました。
 
(1) 贈与税の問題への対応:非上場株式等についての贈与税の納税猶予制度
贈与者の親族である後継者が、経済産業大臣の認定を受ける非上場会社を経営していた贈与者
(先代経営者)から、贈与によりその保有する非上場株式の全部(贈与前から既に後継者が保有していた
ものを含めて、発行済株式の総数の3分の2に達するまでの部分に限る。)を取得し、その会社を経営して
いく場合には、その猶予対象株式の贈与に係る贈与税の全額の納税を猶予する、というものです。
この制度の活用により、生前贈与時の税負担を繰り延べることができます。

(2)
遺留分の問題への対応:遺留分に関する民法の特例
遺留分の特例とは、後継者を含む遺留分を有する推定相続人全員の合意により、先代経営者から後継者に贈与された自社株式について、遺留分算定の基礎財産への算入において一定の制限を設けるものです。
 具体的には、(1)自社株式の価額を遺留分算定の基礎財産に含めないこととすることにより、相続発生時の遺留分減殺請求によって自社株式が分散してしまうのを防ぐことができます(除外合意)。
 また、(2)遺留分算定の基礎財産に算入すべき自社株式の価額を予め固定することにより、その後の
業績アップによって自社株式の価額が上昇し遺留分が増大してしまうことを防ぐことができます(固定合意)。なお、固定合意の際には、その固定した価額が、相当な価額として公認会計士等が証明したもので
あることが必要です。
さらに、(3)除外合意を行う際には、代償財産として他の推定相続人に対しても贈与を行うことがありますが、この後継者以外の推定相続人が贈与を受けた財産についても遺留分算定の基礎財産から除く旨の
合意をすることもできます(附帯合意)。
これら民法の特例が定められる前にも、遺留分の放棄という手続きがありましたが、この場合、
放棄しようとする非後継者が自分で家庭裁判所に申立てをして許可を受けなければならず、放棄の
メリットが少ない非後継者に大きな負担を課すこととなっていました。この点、特例の場合には、
推定相続人全員の合意を得る必要はありますが、以降の手続きは後継者が単独で行える点で
利用のしやすさは向上していると言えるでしょう。

(3)
まとめ
 これらの制度を活用するためには、資本金や従業員数において中小企業者の要件を満たしていることや、
経済産業大臣の確認、贈与株式数の制限、贈与税の納税猶予に関しては贈与後も継続的な必要条件が
あるなど、満たすべき要件は多いですが、生前贈与を行う際には活用を検討してみてはいかがでしょうか。