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証券新聞20100708

2010-07-08 (Thu) 09:40
Q.私の父が先日亡くなり、遺産の一部を相続しました。相続税の納税資金に充当するために、そのうち上場株式を売却することを検討しております。相続後の一定期間内に相続財産を譲渡した場合には、所得税の譲渡所得の計算において特例があると聞いたことがあるのですが、どのようなものでしょうか。
20100708

A.1.内容
相続又は遺贈により取得した相続財産を、相続開始日の翌日から相続税申告書の提出期限の翌日以後3年以内に譲渡した場合には、納付すべき相続税額のうち下記算式により計算した金額を譲渡資産の取得費に加算して、譲渡所得の計算上控除することができます。相続により取得した財産を譲渡した場合に、譲渡益に対して所得税が課税されると、一つの財産に対して相続税と所得税が課されることとなり過重な税負担となってしまいます。そのような税負担を軽減するためにこのような特例が設けられています。
ちなみに、相続(限定承認を除きます。)、遺贈(限定承認を除きます。)又は贈与により取得した場合の譲渡資産の取得費は、それぞれ被相続人、遺贈者又は贈与者の取得費を引き継ぎます。
【算式】
 
譲渡者の
確定相続税額
(※)
×
譲渡者の課税価格計算の基礎となった譲渡株式等の価額
譲渡者の相続税の課税価格(債務控除前)
 
※確定相続税額は、譲渡の日の属する年分の所得税の納税義務の成立時(原則としてその年の1231日、その日が相続税の申告期限前であるときは申告期限)において確定している相続税額であり、贈与税額控除又は相次相続控除の適用がある場合には、適用前の相続税額とします(相続税額に異動が生じた場合には、再計算ができる等の取扱いがあります。)。
譲渡資産の譲渡収入金額から取得費及び譲渡費用の合計額を控除した残額相当額を超える場合には、超える部分については取得費に加算される金額はないものとされます。
言い換えると、取得費に加算される相続税額は譲渡資産の譲渡益を上限とし、それにより譲渡所得がゼロとなります。
 
2.債務控除との関連
 
前記算式の通り、取得費に加算する相続税額の計算において、分母の金額は債務控除前の課税価格となります。分母の金額が小さいほど取得費に加算できる金額が大きくなりますので、相続時に債務控除がない場合のほうが譲渡所得に係る税額も小さくなるものと想定されます。したがって、相続後直ぐに譲渡が想定されているような株式を相続した方は、取得する遺産の額が同じならば債務を引き継がないような財産分割であると、税計算上においては有利になります。ただし、債務の承継については承継先等に制限が伴うものもありますので、慎重に検討を進めていくことが必要です。
 
3.確定申告との兼ね合い
 
上場株式は、特定口座(源泉徴収選択口座)において譲渡する限りにおいては確定申告は不要となります(譲渡損失を繰越す場合等の一定の場合には確定申告が必要になります)。ただし、この譲渡所得計算において相続税額の取得費への加算を行う場合には確定申告が必要となります(所得税の確定申告書の第三表の「特例適用条文」欄に「措法39条」と記入することと、相続財産の取得費に加算される相続税の計算明細書等の添付が必要となります。)。
ところで、そもそも確定申告義務がなかった方が、当該適用を受けるために確定申告を行うこととする場合には注意が必要です。例えば、従来配偶者控除の対象者であった場合において、確定申告により配偶者控除の対象者から外れるような場合には配偶者の税負担に影響してきます。また、当人の社会保険にも影響する可能性もあります。したがって、当該適用を受けようとする場合には、確定申告をすることでどのような影響があるかを十分に検討した上で適用の有無を判断することにしましょう。