What's New 更新情報
証券新聞20100617【回答編】
2010-06-18 (Fri) 18:38
A.金銭による納税ではなく、株式を物納する方法が考えられます。
相続税の納税は、原則として金銭納付によるとされておりますが、納付すべき相続税額を金銭で納付することが困難であり、かつ延納によっても金銭で納付することが困難な理由がある場合には、納税義務者の申請により、納付が困難な金額を限度として、物納が認められています(相法41(1))。そして、物納における収納価額は、相続税評価額とされます(相法43(1))。
ご質問の事例で物納を選択すれば、現在の低い株価ではなく、相続税評価額をもって収納価額とされますので、これならば売却により損を被ることなく納税できるでしょう。
ただし注意しなければならないのは、この物納に充てることができる財産には優先順位があり、順位の高いものからしか物納することができないということです。財産の種類ごとの優先順位は次のようになっております(相法41(2))。
|
物納可能な財産の種類
|
第1順位
|
国債、不動産、船舶
|
第2順位
|
社債、株式
|
第3順位
|
動産
|
現状の案を上記の優先順位に照らせば、あなたと弟さんの相続財産の中で物納することができるのは、まずは第1順位の不動産となってしまいますので、不動産を手元に残しておきたいという当初の意図は達成できないことになってしまいます。
もし不動産を手元に残したいのであれば、次のように相続する案が考えられます。
<相続資産> <納税後>
|
私
|
弟
|
|
|
私
|
弟
|
預金
|
2億円
|
-
|
|
預金
|
-
|
-
|
上場株式
|
-
|
4億円
(時価2億円)
|
|
上場株式
|
-
|
2億円
(時価1億円)
|
不動産
|
4億円
|
-
|
|
不動産
|
4億円
|
-
|
絵画
|
-
|
2億円
|
|
絵画
|
-
|
2億円
|
計
|
6億円
|
6億円
(時価4億円)
|
|
計
|
4億円
|
4億円
(時価3億円)
|
上記であれば、あなたは預金により、弟さんは株式の物納により2億円を問題なく納税できるうえ、納税後の資産については現状の案より合計で1億円多くなる結果となります。なお、将来上場株式の株価が上昇する見込みとはいえ、相続時の相続財産の時価の差が気になるようであれば、代償分割を活用することも考えられます。
≪まとめ≫相続財産の中に上場株式がある場合、相続税評価額と現在の株価を比較し、株価が下落している場合には物納による納税が有利です。ただし、意図した通りに物納できるよう、物納可能な財産の優先順位を考慮して遺産分割を行う必要があります。